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譲れない線はどこなのか―特養・個室ユニットの行方(4)(医療介護CBニュース)

 長妻昭厚生労働相は4月16日の閣議後の記者会見で、特別養護老人ホーム(特養)のユニット型施設の1人当たりの居室面積基準を、現行の13.2平方メートル(約8畳)以上から多床室と同水準の10.65平方メートル(約6畳)以上に引き下げる方針を示した。
 個室ユニット化の推進と基準引き下げによって定員を増やすのが狙いで、6月にも開かれる社会保障審議会介護給付費分科会に諮問し、答申を受けて速やかに省令の改正を行う考えだ。
 だが、果たしてこの施策が個室ユニット推進につながるのだろうか―。

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 特別養護老人ホーム同和園(京都市)の橋本武也園長は、この施策に異を唱える。居室面積基準を引き下げたからといって、個室化が進むことはないという。「少しは歯止めが掛かるかもしれないけど、結局は多床室と個室を併用して建てられる基準は変わっていない。多床室はどんどん広がる」。
 本当に70%の整備目標を達成しようとするのなら、通知などではなく、老人福祉法を改正すればいい話という。
 橋本氏は地方自治体に多床室の併設が広がった理由を、特養建設のための補助がそれまでの地域介護・福祉空間整備等施設整備費交付金から、2007年度から地方交付税交付金に変わったことが大きいと説明する。
 それまでは個室でなければ、地方自治体への国庫補助は認められない状況だったが、国から財源が移ったことで整備の権限も地方自治体に移り、「たがが外れた」(橋本氏)という。
 橋本氏は果たしてこの施策で、利用者の居住費の負担が軽くなるのかと疑問を抱く。居室面積を小さくすれば建設コストは下がるが、居住費が変わらないのであれば、事業者の利益が増えるだけではないかという。
 また、特養の整備が原則個室ユニットとされた03年からこれまでにオープンした個室ユニット施設は、13.2平方メートルの基準に従って建設し、多額の借金も背負ってきたという。
 今回の緩和措置によって、新たに施設を建てる場合に建設コストは安くなるほか、福祉医療機構からの融資の返済期間も20年から25年に延長されるなどの優遇措置も始まっている。橋本氏は、皆が個室ユニットを造らなくなったからと基準を下げるやり方は、「差別的」ではないかと訴える。
 橋本氏は、今回の改正は特別区の東京23区に限ってモデル事業のような形で行うべきといい、全国一律での実施に反対する。大都市部には土地確保の難しさや地価などの問題があるが、全国同じ基準で引き下げるとすれば、整合性が取れないとしている。
 また、これまで拡大してきた居室面積の基準が一転して小さくなったことも時代に逆行するといい、厚労相はそもそも13.2平方メートルの居室面積基準の根拠を説明すべきと主張する。

 長妻厚労相は個室ユニット型推進を堅持する方針を示し、これまで通り70%以上の整備目標を目指すとしている。しかし、居室面積基準を引き下げたとしても、約42万人とされる特養待機者をどの程度入居させるのかといった方策は見えてこない。
 またハードだけでなく、利用者と職員の安全のためにも、人員配置基準の見直しも大きな課題になるはずだ。
 当然、それらには財源の問題が立ちはだかる。

 個室ユニットの問題は、これから先、親に介護が必要になった場合、もしくは自分が高齢になり介護が必要になった場合に、何が譲れない線なのか、さらにはどれくらいの負担が必要なのかを問うているのではないだろうか。これに対し、国はこれだけのサービスができるということを示さなければ、年金不信の二の舞いにならないだろうか―。
 これはもちろん、介護に限った問いではないだろう。団塊の世代が後期高齢者となる2025年は決して遠い未来ではない。

(この連載は大戸豊が担当しました)


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